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甘々、デレデレ、女の子。
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「すみませんがこちらから先は関係者以外立ち入り禁止となっております」
 上品な出で立ちの男性が、なごみちゃんたちの行く手を遮りました。どうやらこの先が楽屋につながっているようです。
 こちらを威圧することのない柔らかな表情で、それでいて有無を言わせず通ることを拒む男性の振る舞いに、なごみちゃんはちょっとだけ怖くなって、ついついアマテラス様の陰に隠れるように身を寄せてしまいます。
「アマテラスが来たとウズメに伝えてくれ。古い知合いでな。一言あいさつがしたい」
 もちろんアマテラス様は怖気づくことなどなく、要件を伝えます。
 アマテラス様の言葉に、ややいぶかしげな顔をしたように見えましたが、すぐに表情を戻し、男性はゆっくりとした口調で答えました。
「申し訳ありませんが、許可のないものは通すなと言い使っておりますので」
「その許可を得ようとことづけを頼んでおるのだが、それぐらいは構わんだろう?」
「……申し訳ありませんが演者への伝言などは承ってはおりません」
「そう堅苦しくなるな。一言確かめるだけでことは済む」
「失礼ですが、お客様。神様といえど例外を認めるわけにはいきませんので」
「そうゆう魂胆ではないのだがなあ。それ程狡猾な神に見えるのか?」
「いえ、決してそのようなことは」
「ならばよいではないか。大した手間でもあるまい」
「ですが、先ほども申しあげましたように例外は……」
「構いません。その方たちをお通ししなさい。」
 突然の声に、やや雲行きがあやしくなってきた会話が打ち切られました。
 ほんの少しハラハラしながら二人の会話を聞いていたなごみちゃんは、思わぬ助けに感謝しました。ですが楽屋へ続く通路の奥から姿を現した声の主を見て、それはもうびっくりしてしまったのです。
 無理もありません。不意に身の丈七尺はあろうかという長身の女神が現れれば、驚かない巫女の方が少ないくらいです。その上、体つきはたくましく、掌はなごみちゃんの顔ほどもあり、面立ちに至っては、それはもうこれでもかというほど勇ましいものでしたので、なごみちゃんはすっかり怯えてしまいました。
「しかし、イワナガヒメ…」
「ウズメ様からの指示です。後は私がご案内するから、貴方はそのまま警備を続けなさい」
「……かしこまりました」
 どうやらウズメ様はアマテラス様が来ていたことに、気付いていたようです。
 女神の話に納得したのか、男性は道を空けてくれました。
「どうぞこちらへ。私がウズメ様の部屋までご案内させていただきます」
 女神の言葉にうむ、と素直に従うアマテラス様。なごみちゃんも慌てて後に続きます。
「大変失礼しました。中にはアマテラス様のことを存じ上げない若い人間もおりますので」
「いや、構わんさ。そうなるように隠居していたようなものだからな。私こそさっきの若造には申し訳ないことをした。久しぶりにこんな所に出てきたものだから、穏便な振る舞いというの忘れがちになる」
「そのようなことは……。知らなかったとは言え、無礼な振る舞いに対し寛大に対応していただいたと感じます」
 女神は心底申し訳なさそうに言いました。真摯な心持が言葉の響きに感じられます。
「そのように言われると逆にこちらが恐縮してしまうな。お前こそ、そう硬くならずともよい。ええと……イワナガ、といったか。」
「はい。お初お目にかかります、イワナガヒメです。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。今は訳在ってウズメ様の御側に置いてもらっています」
「なるほど。お前の用に生真面目そうなものが仕えておれば、あいつも随分楽ができよう」
「ありがとうございます。ウズメ様には大変良くしていただいているので、少しでも恩返しができればと努力している次第です」
 アマテラス様の言うとおり、イワナガ様は随分と生真面目な性格の用です。初めはその勇猛な体躯に気押されていたなごみちゃんでしたが、その誠実な振る舞いや身のこなしの品の良さを見ると、ほんの少しですが緊張が解けてきました。人も神も、見た目だけでは分からないものです。
 その時、ふとイワナガ様となごみちゃんの眼が合いました。ほんの少し解けていた緊張の糸がまたもや張りつめます。
「失礼ですがそちらにいらっしゃるのは……」
「あ、あの、私はなごみと申しますものでして、アマテラス様に仕えさせていただく巫女として御側においていただいているものでして、その、未熟者ですが、精いっぱい信仰しています。あ、お祀りしています!」
 とてつもなく緊張したなごみちゃんの自己紹介に、アマテラス様は苦笑し、イワナガ様はきょとんとしてしまいました。
 しかし、イワナガ様はすぐに頬を緩めやんちゃな笑みを浮かべると、優しく言いました。
「自己紹介ありがとうなごみさん。ですが、そんなに緊張しなくても構いませんよ。こんななりをしていますが、取って食おうなんて思ってませんから」
「め、めっそうもない!!そんな失礼なことを考えたりなんてこれっぽっちもしていません!!」
 慌てて返すなごみちゃんの様子に、イワナガ様は顔をほころばせますが、アマテラス様は思わずため息をもらしてしまいます。
「冗談だと分かろうものを……」


~第三話あらすじ~
かつてアマテラス様の窮地を救い、その華麗なる舞で列島に名をとどろかせた芸能をつかさどりし女神、天宇受売命(アメノウズメノミコト)。ひょんなことから彼女に気に入られてしまったなごみちゃんは、ウズメ様の跡取りを探すために開かれる、神々が集いし舞踏大会「富士・ウズメ杯」に出場することに。
立派な巫女になるためには、舞の技術が必要不可欠だと説得されたなごみちゃんは、舞の指南役として抜擢されたイワナガヒメと修行に明け暮れます。そこに現れたのは、優勝候補の超美少女系女神サクヤちゃん。
強力な好敵手の出現にはたしてナゴミちゃんの運命やいかに!!

こんばんは。
今日のはなんとなく長くなってしまいました。僕の悪い癖です。
今回は新しい試みとして、あらすじを書いてみました。
本文は「富士・ウズメ杯」の開催を祝うお祭でウズメ様の演舞を見た一人と一柱が、ウズメ様に会いに行く途中、イワナガヒメと対面するシーンです。
このお話は結構テンションが高めになる予定なのでちゃんと書いてみるのが楽しみです。
そのためにもまとまった時間がほしいなぁ。
どうもこつこつ書きためるのが苦手です。よくないですねぇ……。

というわけで今日のキーワードは「真空仏陀切り」です。
 

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