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甘々、デレデレ、女の子。
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 落ち込むヒルコ様の肩に、弁財天様がそっと手を差し伸べました。
「落ち込む必要はありませんよ。貴方は十分に誇れるものを、神として示せるものをお持ちじゃありませんか」
「そんなことありません。結局何をやってもダメで。私なんか……。」
 すっかり自信をなくしてしまったヒルコ様は力なく答えます。ですが、弁財天様はゆっくりと首を振ると、諭すように優しく言葉をつづけました。
「今日一日ご一緒させていただいて、私は気付いたのです。貴方が何物にも代えがたい、素晴らしいものをお持ちであるということに……」
「私にも、そんなものがあるというのですか?」
「もちろん」
 弁財天様はおもむろに背負っていた琵琶を構えると、神々しさを漂わせる優雅な指使いで音を奏で始めました。
 それは誰しもが知っている、懐かしい響きを持った曲でした。
「聴かせてください。貴方のその美しい声を……」
 音楽の神が奏でる音色の何と素晴らしいことでしょう。一人また一人と足を止め、天下の往来は瞬く間に弁財天様の琵琶に魅せられた人々であふれかえりました。
「さあ、歌ってください」
「で、でも……」
「大丈夫です。自信を持って」
「そんな、無理ですよ……」
 弁財天様に促されますが、ヒルコ様はなかなか歌いだすことができません。
 もともと引っ込み思案な性格ですから、人前で歌を歌ったことなどありません。その上こんなに大勢の人が集まっています。ヒルコ様は緊張のあまり、すっかり縮こまってしまいました。
「どうしよう……」
 ヒルコ様の危機に、なんとか助け船を出したいなごみちゃんでしたが、ちっとも良い案が思い浮かびません。こうしている間にも、人はどんどん集まり、ヒルコ様はどんどん小さくなってしまいます。

 そんな時でした。アマテラス様の凛々しい声が響いたのです。

「私も聴きたいな、お前の歌を」
 場は静まり返り、美しい琵琶の旋律と緊張感があたりを包みます。聴衆もなごみちゃんも、アマテラス様とヒルコ様の様子を固唾をのんで見守っていました。
「……アマテラスちゃん?」
「歌ってくれないか。私たちのために」
 アマテラス様はどこまでも真っすぐで揺るぎのない眼をもって、ヒルコ様を見つめます。
 突然のことに、はじめはきょとんとした表情を浮かべていたヒルコ様でしたが、アマテラス様の言葉に勇気をもらったのでしょう。さっきまでおびえていた瞳は、徐々に力強い光をたたえ始め、アマテラス様の瞳をまっすぐに見返してゆっくりと決心したように頷きました。
 そして恐る恐るではありますが、ヒルコ様は歌い始めます。

 その歌声は何処か頼りなく、お世辞にも上手いとは言い難いものでした。
 ですが、不思議と心地よく、魅力的な歌声でもあったのです。

「なんだか、幸せな気持ちにしてくれる歌声じゃありませんか?」
 そんななごみちゃんの問いかけに、アマテラス様はただゆっくりと頷くのでした。
 




新キャラの弁財天様とヒルコ様(のち恵比寿様)は七福神より登場してもらいました。
この夢紀行シリーズでは七福神になごみちゃんとアマテラス様の周りを固める役割をしてもらおうと考えています。
基本的に一回限りのゲストではなく、物語のそこかしこに登場して話を盛り上げてもらう感じです。
たとえるなら、風まかせ月影蘭でいう猫鉄拳のみゃお姉さん見たいな位置ですかね。
え?余計分かりにくい?

なおオリジナルの七福神だと男女比6:1と大変偏っているので、その辺はいじって勝手にキャラ付けしてみました。
今回の出演者に関して言うと弁財天様は男神、ヒルコ様は女神になってます。
ちなみに弁財天様はご利益バンド「七福神」を結成するための神メンバーを集めようと各地を旅しています。
また蛭子命→恵比須神という話を聞いたので、ヒルコ様とアマテラス様は姉妹みたいな感じで捉えています。
なのでヒルコ様は恐れ多くもアマテラス様をちゃん付けで呼べるわけです。

というわけで今日のキーワードは「話上手は聞き上手」です。

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