甘々、デレデレ、女の子。
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「すんません、御大将。こんな山奥の河原なんかで夜を明かすことになっちまって」
「それは構わんが……。その呼び方はやめろと言っておるだろう」
「もうしわけねぇ」とさほど悪くも思っていないような様子で応える因幡は、アマテラス様の言葉よりも薪の様子が気になるようです。
さっきからしきりに木の枝でああでもないこうでもないと火の具合を調節していて、人の話を聞いているやらいないやら。アマテラス様は思わずため息をもらしてしまします。
「どうしたんです? 腹、減りましたか?」
「……いや。何でもないさ。しかし、お前はオオクニヌシの所にいなくていいのか? またあの猪の異形に襲われるかもしれないという時に、主人を側で守るのが従者の務めだろう」
「旦那のことなら心配いりませんよ。なんてったてオオクニヌシの旦那ですから。あんな優男ですが、ろくでもねぇ兄貴たちの度を越した嫌がらせに長年耐え抜いただけの根性とたくましさってのは持ってるんですよ。そうゆうのは有事の時に、案外頼りになるもんです。それに今は頼れる毘沙門天様が近くにいてくださるんだから怖いもん無しでさぁ。だいたい荒事となりゃ俺みたいのは鼻っから役に立ちませんから、旦那の言いつけ通り大事な客人を無事に屋敷まで連れ戻すことが、今俺に出来る旦那への最大の忠義ってやつなんだと思ってますよ」
相変わらず薪をいじり続ける因幡でしたが、今度はちゃんとアマテラス様の話を聞いていたようです。
普段となんら変わりのない調子の良い軽い口調でしたが、その言葉の中には確かにオオクニヌシへの信頼と忠誠心が感じられました。オオクニヌシが何故彼を側に置きたがるのか、アマテラス様にも少しわかったような気がします。
「それに旦那は出雲の名家の出ですからね。なんでもスサノオとか言うそれはもうどえらい神様の血を引く家柄らしいですから、ちょっとやそっとのことじゃあ、くたばりゃしませんよ。まぁ俺は無学なんでそのすごい神様ってのが、これこれこうゆう神様だってとこまではよく知らねぇんですがね」
「スサノオ……?」
全く予期していなかっただけに、その名前が因幡の口から発せられたことに対する驚きをアマテラス様は隠す ことができませんでした。案の定、因幡の方も少し驚いたような表情でアマテラス様を見つめています。
「もしかして御大将、スサノオ様って方をご存じなんで?」
「まぁ、そうだな。確かに知ってはいる。大したことではないが、あいつとは色々と付き合いがあったんだ。何にしても、もう気の遠くなるような昔のことだが……」
自分でも嫌になるくらいあまりにも下手なごまかしでしたが、因幡は敏感にこちらの気持ちを悟ってくれたようで、「そいつはすげぇや」と当たり障りのない言葉を発するだけで、それ以上何か聞こうとするわけではなさそうでした。
「すまないな」
「はい?何のことです?」
そんな風にわざとらしく返事を返す因幡が、これまた大げさにとぼけたような顔をしていたものですから、アマテラス様は思わず吹き出してしまいました。
「なんです。人の顔見て笑いだすのはいくらなんでも失礼でしょう」
「いや、悪いな。別になれない芝居をさせる気ではなかったんだが」
「いやね。御大将が何を言ってるかはわからねぇんですがね。あれですよ。俺だって話たくねぇ事の二つや三つや四つや五つは持ってますってことですよ。」
「お前はいい従者になれるだろうな。調子が良くて抜け目ないが、頭は切れるし気も使える」
「いやいや、御大将におほめいただくとは光栄でさぁ」
~あらすじ~
山越えのさなか、毘沙門天の「近道をしよう」という提案で案の定、迷子になってしまったアマテラス御一行。どうしたものかと途方に暮れているところを、このあたりの領主に仕える因幡という男に助けられます。彼の計らいで、奉公先の屋敷に泊めてもらうことになった一行でしたが、そこで出会ったのが領主の一人娘のヤカミ姫と彼女の婿養子であるオオクニヌシ。彼らは後日、このあたりで最も高い山である手間山の山頂で、土地の神様に自らをその土地の統治者として認めてもらうために「国褒めの儀」を執り行うとのこと。すったもんだでその儀式に同行することになったアマテラス御一行でしたが、山を登る道中で謎の猪妖怪に襲われてしまいます。はたして妖怪の正体は?オオクニヌシ夫妻は無事に儀式を執り行うことができるのか?
猪妖怪「赤猪」に襲われた後、一行はばらばらになってしまうのですが、本文はその内のアマテラス組が河原で野宿をする際の一場面です。
本当はこの後の会話を書きたかったのですが、それを書こうとするとあまりにも長くなるAND二月中に間に合わないという事で今回はカット。
そのせいで、本来はアマテラス様中心になる場面のはずがゲストキャラクター因幡の独壇場となってしまいました。でも彼の口調は書いていて楽しいです。
というわけで今日のキーワードは「クロマトグラフィー」です。
「それは構わんが……。その呼び方はやめろと言っておるだろう」
「もうしわけねぇ」とさほど悪くも思っていないような様子で応える因幡は、アマテラス様の言葉よりも薪の様子が気になるようです。
さっきからしきりに木の枝でああでもないこうでもないと火の具合を調節していて、人の話を聞いているやらいないやら。アマテラス様は思わずため息をもらしてしまします。
「どうしたんです? 腹、減りましたか?」
「……いや。何でもないさ。しかし、お前はオオクニヌシの所にいなくていいのか? またあの猪の異形に襲われるかもしれないという時に、主人を側で守るのが従者の務めだろう」
「旦那のことなら心配いりませんよ。なんてったてオオクニヌシの旦那ですから。あんな優男ですが、ろくでもねぇ兄貴たちの度を越した嫌がらせに長年耐え抜いただけの根性とたくましさってのは持ってるんですよ。そうゆうのは有事の時に、案外頼りになるもんです。それに今は頼れる毘沙門天様が近くにいてくださるんだから怖いもん無しでさぁ。だいたい荒事となりゃ俺みたいのは鼻っから役に立ちませんから、旦那の言いつけ通り大事な客人を無事に屋敷まで連れ戻すことが、今俺に出来る旦那への最大の忠義ってやつなんだと思ってますよ」
相変わらず薪をいじり続ける因幡でしたが、今度はちゃんとアマテラス様の話を聞いていたようです。
普段となんら変わりのない調子の良い軽い口調でしたが、その言葉の中には確かにオオクニヌシへの信頼と忠誠心が感じられました。オオクニヌシが何故彼を側に置きたがるのか、アマテラス様にも少しわかったような気がします。
「それに旦那は出雲の名家の出ですからね。なんでもスサノオとか言うそれはもうどえらい神様の血を引く家柄らしいですから、ちょっとやそっとのことじゃあ、くたばりゃしませんよ。まぁ俺は無学なんでそのすごい神様ってのが、これこれこうゆう神様だってとこまではよく知らねぇんですがね」
「スサノオ……?」
全く予期していなかっただけに、その名前が因幡の口から発せられたことに対する驚きをアマテラス様は隠す ことができませんでした。案の定、因幡の方も少し驚いたような表情でアマテラス様を見つめています。
「もしかして御大将、スサノオ様って方をご存じなんで?」
「まぁ、そうだな。確かに知ってはいる。大したことではないが、あいつとは色々と付き合いがあったんだ。何にしても、もう気の遠くなるような昔のことだが……」
自分でも嫌になるくらいあまりにも下手なごまかしでしたが、因幡は敏感にこちらの気持ちを悟ってくれたようで、「そいつはすげぇや」と当たり障りのない言葉を発するだけで、それ以上何か聞こうとするわけではなさそうでした。
「すまないな」
「はい?何のことです?」
そんな風にわざとらしく返事を返す因幡が、これまた大げさにとぼけたような顔をしていたものですから、アマテラス様は思わず吹き出してしまいました。
「なんです。人の顔見て笑いだすのはいくらなんでも失礼でしょう」
「いや、悪いな。別になれない芝居をさせる気ではなかったんだが」
「いやね。御大将が何を言ってるかはわからねぇんですがね。あれですよ。俺だって話たくねぇ事の二つや三つや四つや五つは持ってますってことですよ。」
「お前はいい従者になれるだろうな。調子が良くて抜け目ないが、頭は切れるし気も使える」
「いやいや、御大将におほめいただくとは光栄でさぁ」
~あらすじ~
山越えのさなか、毘沙門天の「近道をしよう」という提案で案の定、迷子になってしまったアマテラス御一行。どうしたものかと途方に暮れているところを、このあたりの領主に仕える因幡という男に助けられます。彼の計らいで、奉公先の屋敷に泊めてもらうことになった一行でしたが、そこで出会ったのが領主の一人娘のヤカミ姫と彼女の婿養子であるオオクニヌシ。彼らは後日、このあたりで最も高い山である手間山の山頂で、土地の神様に自らをその土地の統治者として認めてもらうために「国褒めの儀」を執り行うとのこと。すったもんだでその儀式に同行することになったアマテラス御一行でしたが、山を登る道中で謎の猪妖怪に襲われてしまいます。はたして妖怪の正体は?オオクニヌシ夫妻は無事に儀式を執り行うことができるのか?
猪妖怪「赤猪」に襲われた後、一行はばらばらになってしまうのですが、本文はその内のアマテラス組が河原で野宿をする際の一場面です。
本当はこの後の会話を書きたかったのですが、それを書こうとするとあまりにも長くなるAND二月中に間に合わないという事で今回はカット。
そのせいで、本来はアマテラス様中心になる場面のはずがゲストキャラクター因幡の独壇場となってしまいました。でも彼の口調は書いていて楽しいです。
というわけで今日のキーワードは「クロマトグラフィー」です。
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